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フード・コラム

レシピでは伝わらない母の味

日本フードアナリスト協会 樋口恵子

私は、仕事が趣味といっていいくらいの暮らしを続けてきました。ありがたいことに、私の母が娘2人の面倒を見てくれていました。

母に代わって休日に作る私の手料理は、いつも「おいしい」とお世辞でも言ってくれる夫の評価とは違い、娘たちからは不評でした。「砂糖が足りない? 塩が多い? おばあちゃんとは何かが違う!」と厳しいお裁きを受けるばかりでした。

母の味を再現するつもりで私のレシピを検証して気づいたことは、それは、母と私では「味の演出」の仕方が違っているということでした。いくら味にうるさい私でも、その料理の味が同じあっても、その料理から醸し出される味の演出が違えば、まったく別のものに変わってしまうということでした。

例えば、兄が大学時代に友人をわが家へ呼び、徹夜マージャンをしていた30年前の話です。翌朝、母が差し出す味噌汁を待ち構えていたように皆の手が止まったという逸話があります。母の味噌汁目当てにマージャン大会が行われていたのでしょうか。

今でもあの味が忘れられないと、風の便りに聞きます。

今では高齢となった母の味噌汁をいただくことができなくなりましたが、素材の持つ特徴に合わせた手順や火の使い方など、母の味噌汁は深みがありまろやかで、心が温まるのです。

レシピでは伝わらない母の味を再現できるまで、私の「食」への勉強はこれからも止むことはないでしょう。1人でも多くの方に、いつまでも健康でこころから美味しいと思える、ときめきの「美(び)食(しよく)良(りよう)菜(さい)レシピ」を体感していただける事が私の夢です。