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海外だより

藤田にこ『食ッキング・食っきんぐ』

Celery が香る幸せの記憶

モントリオールから、久しぶりに海外便り「食ッキング・食っきんぐ」をお届けします!
大変御無沙汰しておりました。モントリオールの今年の冬は例年に増して厳しく長いものでした。ようやくやってきた春、そしてもうすぐそこまで来ている夏を感じて、顔を上げ、フル充電した五感とともに、美味しいお便りお届けします!


セロリ大好き?大嫌い?

セロリほど、好き嫌いがはっきり分かれる野菜は他にないそうな。その原因はあの独特の強い香りにあるんですって。セロリの芳香成分である「フタライド類」は、独特の強い香り。イライラ解消の鎮静作用がある一方で、こういう強い香りは、脳の網様体を刺激し、「好き」にしろ「嫌い」にしろ、その程度を「大好き」「大嫌い」まで押し上げ(下げ)てしまうらしいのです。

私は「大好き」派。爽やかな香りで気持ちも晴れやかにスッキリしますし、シャキシャキとした歯ごたえも、そのまま野菜ディップのおやつにしたり、サラダに混ぜたりして毎日食べて、とことん味わっています。


セロリの香りに惹きつけられて

さて、昨日突然、半年近く御無沙汰していた友人ロジェから、とある新作発表会へのお誘いが入りました。ロジェは元インテリアデザイナー、今は引退して画家さんになっています。そのインテリアデザイナー時代の教え子のお店で、新しいオー・ド・トワレの発表会があると言うのです。どぎつい香水の香りが苦手な私は二の足を踏んだのですが、久し振りにロジェに会いたいのと、ロジェの「美味しい香りだよ」の誘い文句が気になったので、出かけることにしました。そして私の中途半端な期待は、見事素晴らしい方向に裏切られたのです!

新作の名前がその嬉しい裏切りの始まりでした。「Eau de celeri」(オー・ド・セロリ)、セロリの水、という名のオー・ド・トワレだったのです!


オー・ド・トワレを作ったのは、ここケベック州で唯一の調香師、Isabelle Michaudイザベル・ミショーさん。フランスのISIPCA(香水、化粧品および食用アロマの国際高等学院)で学んだ後、ここケベックに戻り、自らの香水研究所・会社Monsillage(モンスィヤージュ)を設立しました。最初の材料の選定から最後の仕上げの工程まで、全て自ら行うイザベルさん、その徹底した姿勢には、プロとしての姿勢とアーティストとしての意気込み、情熱を感じます。

このイザベルさんの最新作が、オー・ド・セロリ。透明な黄緑色のガラス瓶の中で、目にも優しく輝くオー・ド・トワレです。その香りを嗅ぐより先に、イザベルさんは、あえて、その構成成分である、「コリアンダー」「フレッシュ・ハーブ」「ガルバナム」「ベルガモット」を、それぞれ嗅がせてくれました。

そして最後にいよいよ全てが入りこんだ、オー・ド・セロリを嗅ぎます。軽やかで自由に羽ばたく鳥を思わせる清々しさが鼻に飛び込んできます。決して重くないのにじわじわと深遠に行きわたるような味わいも。女性の、自由と、前向きな気持ちと、おおらかな包容力を応援してくれる香りが見事に完成されていて、それは、作り手のイザベルさん御自身の美しい存在感の表れでもあると感じました。


アーティーチョークも参戦?!

セロリな夕べはまだまだ終わりません。イザベルさんの香水やハーブ石鹸を見ていると、オープニング・カクテルパーティーの陰の主役であるおつまみが運ばれてきます。


 おつまみの作り手は、プライベート・パーティーやテーマのあるパーティーなどで出張シェフをする、L’artichef(ラルティシェフ)のCaroline Cadotteカロリーヌ・カドットさん。パーティーが盛んな土地柄、こうしたニーズはどんどん増えているそうで、素敵な笑顔のカロリーヌさんもひっぱりだこです。お店の名前、ラルティシェフは、アーティーチョークとシェフとを合わせた造語。ここにもまた緑の野菜が登場していますね!


うやうやしく掲げられ運ばれてきたお皿には、これまたセロリ。その丸くへこんだお腹に、くるみののったチーズクリームをかかえて、礼儀正しく並んでいます。王道の組み合わせは、セロリの歯ごたえとチーズの柔らかさの素敵なマリアージュに太鼓判を押します。セロリの香りに包まれながら、味覚もこれでセロリにいちころ。続いて出てきた小さなタルトには、おろしたセロリとローストしたにんにく、パルメザンチーズがのっていて、トリュフ・オイルで味付けがしてあります。セロリをおろせば、こんな可愛らしい使い方ができるのですね。控えめで上品なセロリの別の一面を見ることができました。

セロリの運ぶ幸せ

嗅覚も味覚もセロリに染められ、視覚も緑になごんで過ごした新作発表会。仕上げは、五感の残りの二つ、聴覚と触覚とまいりましょうか。今日の主役、イザベルさんと、陰の功労者、カロリーヌさんに、お礼を言って、おしゃべりをして、ハグをして、笑顔の交換。「セロリのような極上の笑顔」と、互いに褒め合ってお別れでした。
本日の会場は、モダンなデザインのインテリア製品が素敵に並ぶお店、jamais assez(ジャメ・アッセ)。ショーウィンドーにもセロリが素敵に大胆に飾られていました。

 記憶と嗅覚は密接なつながりがあると言います。これからセロリを食する時は、この日の五感の高まりと、オー・ド・セロリの自由な香りとを思い出すことになるでしょう。幸せな香りと記憶、皆様もどうぞ美味しく召し上がれ!

 
モンスィヤージュ http://www.monsillage.com/
ラルティシェフ http://www.lartichef.com/
ジャメアッセ http://www.jamaisassez.com/site