驚きももの木、賞賛の木!

藤田にこ『食ッキング・食っきんぐ』

長らくご無沙汰してしまっておりました、海外便り。このままフェードアウトという選択肢もあったのやもしれませんが、皆様からの励ましのお声が、再びにこの心を突き動かす原動力となりました。ありがとうございます。カナダ東部モントリオールからのお便り、再開いたします。どうぞ皆様、よろしくお引き立てのほど… さて、まずは初心に帰ります。にこの海外便りのタイトル「食(ショッ)キング・食(クッ)キング」。衝撃的な料理。勿論これは、よい意味での衝撃、言い換えれば、心躍るサプライズを指します。人間の持てるあらゆる特性のうち、にこの一番のお気に入りは「遊び心」。相手を驚かせ、喜ばせようと策を練る時、自らの心もワクワク踊り始めます。

先日訪れたレストランは、フランス人シェフJerome Ferrerがサプライズ満載で待ち受けるEUROPEA。Ferrer氏はフランス料理アカデミー会員のすご腕シェフ。評判のお店だけにややかしこまって訪れたにこでしたが、テーブルに飾られたバラの花の美しさと、そこに添えられたチームEUROPEAの、懐深い笑顔のもてなしに、たちまちリラックスの心を取り戻しました。こちらが注文したのは、前菜のスープとメインディッシュのきのこの盛り合わせだけなのに、その前後にこれでもかとばかり、サプライズがやってきます。どれも一口サイズのおつまみ程度ですが、メインディッシュに負けないくらい手間暇かけて作られています。オリーブのクラフティ、クリームチーズのてんぷら、キャンディ型のチーズ揚げ、それぞれが、美しい器に大事そうに置かれて運ばれてきます。目に飛び込む「驚き」は、口に入れたら「賞賛」へと早変わり。一口なのに、いつまでも口中と心に残る「思い出」の味へと変化していきます。 お腹も心も一杯で幸せに浸るにこを最後まで惹きつけて離さないEUROPEAの遊び心。メレンゲのお土産とキッチン見学というおまけまでつけて、笑顔で手を振って送りだしてくれました。

「不思議に思ったり驚きを感じられなくなった人はもう死んだも同然だ」とはアインシュタインの言葉。食の世界で、鼓動を高めるような出会いを重ねて、生きている躍動感を舌を通じて味わいつくしてまいりましょう。皆さんもどうぞお付き合いくださいませ~

レストランEUROPEA