「食の安全性」が問われるようになって、しばらくの時間が流れました。農薬や食品添加物はひとまとめに“安全でないもの”、“体に害を及ぼすもの”とみなされ、スーパーやデパートの食品売り場にずらりと並んだ「オーガニック」、「有機栽培」、「添加物不使用」などを売りにした食材を、多くの消費者が求めるようになりました。“体に悪いもの”に汚されていない食材を選び、購入し、食卓に並べ、食すという一連の作業に消費者はこのうえない安心感を覚え、反対に「有機栽培」、「添加物不使用」といった類の表示がない食材に関しては、疑いの眼差しをあらわにします。
この傾向は、2011年3月11日の東日本大震災による原発事故後、突然私たちの生活の新たな不安要素となった、放射性物質問題でさらに加速度を増しました。放射性物質問題が取りざたされてからというもの、「放射性物質は極力生活から排除したい」という消費者心理から、“放射性物質と消費者のイタチごっこ”が幾度となく繰り返されています。
たしかに、食材の安全性に敏感な消費者は増えました。しかし、“有機栽培とはどんな栽培方法か”、あるいは“農薬は人の体にどのような害を及ぼすのか”と問われたとき、いったいどのくらいの人が明確な答えを挙げられるのでしょうか。
食材がつくられている過程や情報の出所、真偽はそっちのけで“この食材は安全らしい”、“これを摂取したら危険らしい”というあやふやな結論のみに翻弄されている消費者があまりにも多いように感じます。食卓を脅かす問題が多いいま、何より重要なのは、まず私たち一人ひとりが正しい知識を持つことなのではないでしょうか。
“オンラインで注文でき、しかも美味しくて安心”というコンセプトと、現代の家庭環境やニーズが合致し、食材宅配サービスを利用する消費者はここ数年で急増しています。なかでも食材の美味しさはもちろん、徹底した品質管理や安全性への取り組みに定評のある「らでぃっしゅぼーや」に、フードアナリスト里井真由美さん、星野慈さんが訪問。気になるサービスの裏側や、品質を保つための取り組みなどのお話を伺いました。
1級フードアナリスト
里井真由美さん
都内大学病院
糖尿病・代謝・内分泌内科 医師
星野 慈さん
創業25年を迎える、有機・低農薬野菜、無添加食品宅配サービスの老舗。野菜は100%契約生産で、全国約2,100軒の契約農家から直送。食品に関しては90%が自社開発商品。生産からお届けまでのすべてに「らでぃっしゅぼーや」が携わっています。
また、残留農薬の抜き打ち検査を定期的に実施。放射性物質検査の基準は、国よりも厳しく設定しています。安心・安全へのこだわりは「らでぃっしゅぼーや」の根幹となるサービスです。
日本で最初に戸別宅配サービスを開始
益「らでぃっしゅぼーや」は、有機・低農薬野菜、無添加加工食品、環境に優しい日用雑貨を取り扱う個別宅配を行っている会社です。1988年に創業し、現在25年目を迎えております。
里井25年前というと、食の安全に注目が集まりだした頃ですよね。農薬や化学肥料が生態系に与える悪影響などを取り上げた有吉佐和子さんの小説「複合汚染」がベストセラーになりました。
益そうですね。その頃から、過量の農薬や食品添加物は、健康にとってインパクトがあるのではないか、ということが世間一般に広がりました。
星野工業廃棄汚染もそうですね。高度成長がひと段落着いて、人々が生活に落ち着きを取り戻したときになってようやく、問題視されるようになりました。
益とはいっても、最初から「らでぃっしゅぼーや」という会社で宅配サービスを開始したわけではないんです。もともとは「日本リサイクル運動市民の会」という市民団体からスタートしました。当時の大量消費、大量焼却というトレンドに“ちょっと待った”をかけ、フリーマーケットなどリサイクルの取り組みを行っていました。それから約10年が経ったころ、ようやく「環境資源」や「リサイクル」という言葉が一般的になりました。そこで、“この流れを止めないために、みんなが参加できて、共感できる、環境保全の取り組みはなんだろう”と探した結果、たどり着いたのが農薬や化学肥料を極力使用しない「有機野菜」の販売だったんです。それが徐々に変化していって、有機・低農薬野菜の個別宅配サービスというスタイルになりました。
星野最初から戸別宅配というスタイルだったのですか?
益それまでの食材宅配業者は、ある家庭にまとめてお届けして、近所の方々がご自分の注文分をとりに行くという「共同配送」という方法が主流でした。しかし私たちがサービスを開始した頃、ちょうど人々のライフスタイルに変化が生じ、共働きのご家庭が増えたんです。
里井ご近所の方同士で時間をあわせて、注文したものを取りに行くということが難しくなりますよね。
益そこで、私たちが日本で始めて戸別宅配のサービスを開始しました。
「有機野菜」ってどんな野菜?
星野すごく基本的なことなのですが……。「有機野菜」ってよく耳にしますが、正確にはどんな野菜を指すのですか? なんとなく“体に良いんだろうな”というイメージはあるのですが。
益そうですよね。一般的に売られている野菜は、「慣行栽培農産物」、「特別栽培農産物」、「有機栽培農産物」の3種類に分けられます。「慣行栽培農産物」はスーパーや八百屋さんで普通に売られている野菜。「特別栽培農産物」は、農薬や化学肥料の使用が「慣行栽培農産物」の半分以下で栽培された野菜。そして「有機栽培農産物」は、農薬や化学肥料を基本的には避けた状態で、3年間を経過した畑で」栽培された野菜を指します。
里井「有機野菜」として販売するためには、「有機JAS」の審査に通らなければいけないんですよね?
益はい。2000年に日本農林規格が改正され、「有機野菜」はすべて農林水産省の登録を受けた第三者機関の認証を受け、販売の際には「有機JASマーク」の表示が義務付けられました。
らでぃっしゅぼーや独自の厳しい自社基準「RADIX」とは
星野「らでぃっしゅぼーや」さんで販売している野菜は、すべて「有機JAS」を取得したものなのですか?
益いえ、「有機JAS」を取得していないものもあります。というのも、私どもがすべての契約農家さんにお願いしている自社の基準「RADIX」というものがございます。この「RADIX」は「有機JAS」基準に近い内容に加え、トレーサビリティを重視した項目となっているんです。ですから、当社では契約農家さんの「有機JAS」取得にはこだわっていないんです。
里井「RADIX」とは、どのくらい厳しい検査基準なのですか?
益契約農家さんには、使用している土や肥料の詳細や、生産者が複数いる場合はその方々の名簿など事細かにご報告いただき、そのすべてを我々がチェックします。農家さんからすると、「らでぃっしゅぼーや」と付き合うのって、結構面倒くさいみたいです(笑)
星野「らでぃっしゅぼーや」さんで野菜を注文すると、生産者さんのお名前だけでなく、住所まで教えてくださるんですよね。
益はい。私たちは定期的に契約農家さんの畑に足を運ぶのですが、会員の皆さんには生産者の方々の住所をお知らせしているので、みなさんお客様から届いたお手紙などを大切に保管されていて、私たちに見せてくれるんです。
里井自分たちが食べている野菜が、どこで誰がどんな風に作っているのかを知ることができるって、子どもの食育にも良いですね。
益普通は、生産者が農産物を出荷し、消費者が買って食べておしまい、という一方通行ですよね。そこを私たちは「らでぃっしゅぼーや」が媒体となることで、お互いの顔が見える関係性を目指しています。
星野「らでぃっしゅぼーや」さんの基準を満たして、なおかつそれを維持していける農家さんって、そう多くはないように思いますが。
益そうですね。しかし、食に対する消費者の意識が年々高まっていますので、「私たちもその思いに応えなくては」とがんばってくださる農家さんも増えてきています。
里井たしかに、最近の「有機野菜」は以前に比べてきれいですよね。それはやはり農家さんの努力なのでしょうね。
益私は入社して15年目なのですが、入社当時の有機野菜は今よりずっと小さかったり、レタスやキャベツなんかは虫食いだらけでした。当時に比べると、農家さんの栽培技術は格段に上がってきています。
星野同業他社さんに「らでぃっしゅぼーや」さんの安全基準と同等の基準を設けている会社はありますか?
益みなさんそれぞれ独自の基準を設けられていますので一概に「うちが一番安全です!」とは言えませんが、基準書の項目の多さにしても栽培管理にしても、基準自体の厳しさでは当社が国内トップと言ってよいと思います。
里井益さんのおっしゃるとおり、震災の影響もあり、食の安全に対する国民の意識はすごく高くなったと思うんです。とはいえ海外に比べると、その意識レベルはまだまだ……、なのでしょうか。
益そもそも、海外、とくに有機農業が盛んなヨーロッパと日本では“有機栽培農産物を買う”という行為そのものの認識が異なります。日本で“有機野菜を買う”という行為は、「家族や自分自身のために体に良いものを食べたい」というパーソナルなニーズによる場合がほとんど。ところがヨーロッパでは、「環境のために自然に優しい有機野菜を買おう」という環境貢献のひとつと考える人が多いんです。
星野なるほど。
益「週に一回は自分のために有機野菜を食べよう」と、「週に一回は環境に優しい有機野菜を食べよう」という違いです。
里井有機野菜の栽培は環境に優しく、栽培された野菜も体に優しく、おいしい。良いこと尽くめの有機野菜の魅力が、多くの人々に広まると良いですね。
Q.1 有機野菜とは?
2001年にJAS(日本農林規格)に「有機JAS法」という認定法定制度が導入され、この認定を受けた野菜のみが名乗ることができるのが有機野菜です。
①2年または3年以上、禁止された農薬や化学肥料を使用せずに栽培している野菜である(許可されている農薬のみ、使用可能)
② 遺伝子組み換えでない
③ 田畑、施設、用具などに農薬や化学肥料の飛散、購入がない
④ 一貫して、農薬や化学合成肥料に頼らない
これらのポイントをクリアした野菜については、国より「有機JASマーク」を付けて販売することができます。
Q.2 「らでぃっしゅぼーや」で販売している野菜には、
すべて「有機JASマーク」がついている?
いいえ、ついていません。らでぃっしゅぼーやには独自の環境保全型生産基準「RADIX」(商品り扱い基準)があります。「RADIX」は「有機JASマーク」よりも検査項目が細かく、検査内容も厳しいため、「有機JASマーク」取得に関しては、生産者の判断に任せています。
Q.3 「らでぃっしゅぼーや」で販売している野菜は「無農薬」ではないの?
栽培した農産物に直接農薬を使用していなくても、付近で散布した農薬の飛散の可能性などが考えられるため、らでぃっしゅぼーやでは「無農薬」の表記を見直し、「反農薬」という考え方に統一しました。
らでぃっしゅぼーやの「反農薬」という考え方とは
・農薬は人が病気のときに飲む薬のように「仕方なく」使う。
・生産者はより農薬を減らす努力をする。
・使う場合は報告し、情報は公開する。
・環境や人体への影響が大きい農薬は「基準外農薬リスト」に定める。
有機、無添加、無農薬……各社によって異なる実態
おいしい野菜、安心な食品の代名詞となった「有機栽培」や「無添加食品」という食品カテゴリーは、消費者が食材宅配サービス業者に対して一番に求める要素といえます。また食材宅配サービス業者各社にとっても、「有機」、「無添加」といった付加価値は自社商品を訴求するうえで欠かせない商品特徴の一つとなっています。ある一定の基準があるかのように思えるそれらの商標ですが、実は業者によって、食材の栽培基準、販売基準の“厳しさ”は異なります。同じ栽培方法で育てられた農作物でも、A社では「基準クリア」であるのに、B社では「基準に満たず」となることも。そこで、各社がそれぞれどのような商品栽培・販売基準を設けているのか、食材宅配サービス5社で比較表を作成しました。
| らでぃっしゅ ぼーや |
大地を守る会 | Oisix | Pal system | ビオ・マルシェ | |
| 栽培基準 | RADIX ※有機JAS以上に制限が多い独自基準。生産者に対して生産体制の遵守を義務付けている。 | 独自基準の大地を守る会有機農産物等生産基準を設け年一回更新する。 | 有機JAS認定栽培であること、栽培期間中当該地域慣行栽培の5割以下にすることを基準とします。 | 3つの生産管理階層があって「コア・フード」はJAS有機認証を取得しているか、またはそれに準ずると判断された農産物。「エコチャレンジ」はパルシステム独自の「農薬削減プログラム」を実践した野菜。「その他」独自基準の農産物も流通する。 | 100%有機JAS。有機農産物だけでは十分な量を確保できないやむを得ない場合に限って、一部非有機の農産物。 |
| 点数 | 5 | 4 | 3 | 1 | 2 |
| 農薬 | 113種類を禁止 発がん性、水質汚濁、残留性などを考慮。除草剤は一部認めている。農薬の使用有無は表示する。 |
62種類の農薬を禁止している。除草剤は一部認めている。農薬の表示は表示する。 | 有機JAS法に基づく農薬は特に禁止していない。最小限の除草剤も認めている。農薬使用についての表示は特に無し。 | エコチャレンジ商品のみ20を禁止 一部認めている。農薬使用についての表示は特に無し。除草剤も認めている。 | 有機JAS法に基づき低農薬を使用している。除草剤は1部認めている。 |
| 点数 | 5 | 4 | 3 | 1 | 2 |
| 添加物 | 添加物の97%を禁止。加工食品の原材料まで確認できる。 | 原則すべての添加物を禁止。加工食品の原材料まで確認できる。 | 合成保存料、合成着色料は使用しない。使用の有無の表示なし。 | 添加物の使用を最小限にとどめる。使用の有無の表示なし。 | 有機JASで許容された食品添加物のみ使用可能。 |
| 点数 | 4 | 5 | 3 | 1 | 2 |
| 送料 | ※住所による 送料 野菜セット 0円 |
※住所による 送料 210円~ |
※届け先住所による 送料370円~(関東) |
※届け先住所による 送料 200円前後 |
※届け先住所による お試し無料。 送料420円~ |
| 点数 | 5 | 3 | 2 | 4 | 1 |
| 総合点数 | 14 | 12 | 8 | 6 | 5 |
| ランキング | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
2013年6月30日時点
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■栽培管理
らでぃっしゅぼーや、大地を守る会、パルシステムは日本農林規格「有機JAS法」とは別に自社基準を設けている。なかでもらでぃっしゅぼーやの「RADIX」の栽培規定は「有機JAS」を上回る厳しさ。
■農薬
各社とも「無農薬」ではなく「低農薬」を実施し、農薬を使用の際はユーザーにアナウンスをする、という姿勢。そのなかで、使用を禁止している農薬の種類が各社によって異なっている。
■添加物
大地を守る会のみ原則使用禁止。そのほかは農薬同様、各社とも「最小限に留める」姿勢。らでぃっしゅぼーやと大地を守る会は、加工食品に使用した原材料の全てにおいて、詳細確認が可能。
<総評>
他3社が「有機JAS法」に準じた栽培方法であるのに対し、らでぃっしゅぼーや、大地を守る会の栽培管理、品質管理は特出している。とくに「添加物」に関しては、「完全無添加ではないが、“どこで作った何を使っているか”までをわかるようにしている」という姿勢に、2社の消費者に対する思いやりがうかがえる。
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