食の前提『アリガトウ』 稲葉友希

日本フードアナリスト協会 稲葉友希

『料理は愛情』
よく耳にするフレーズですが、わたしの大好きな言葉の一つです。焦って作った料理と愛情を込めて作った料理は、同じ材料や分量でもなぜか味が変わってきます。不思議なものです。

『水は答えを知っている』(江本勝・著 サンマーク出版 2001年)という本があるのですが、そこには、水には、それを構成する小さな小さな結晶が集まっていて、その結晶は、人の声を読み取ることが出来ると書いています。
『アリガトウ』と声をかけると結晶が花のようにきれいになり、『バカヤロウ』と言ったら、結晶が破裂をしてしまう・・・という風に。
水だけでなく、もしかしたら野菜や果物、肉、魚などのすべての食材は、人間と同じように感情を読み取ることができるのかもしれないと思うのです。そうすれば『愛情を読み取る料理』つまり、『料理は愛情』というのも、なるほど説明できそうです。

最近では、コンビニフードやファストフードなど作った人の『顔』や『愛情』が見えない食品と接することも多くなってきました。『顔』が『愛情』が見えなくなると、つい感謝の気持ちを忘れてしまいます。
そういえば食前、食後に『ごちそうさま』『頂きます』と手を合わせて感謝をしている人も減っているように思います。

『戦時中は芋の葉っぱしか野菜は食べれなかったんやで。ひもじい食事でも、お母さんが作ってくれるご飯を、家族みんなで囲んで食べることがどれほど有難かったことか・・・』
という祖母の戦時中のお話は、今でもすごく印象に残っています。

戦後、物があふれ、便利になりましたが、食事をすることが普通になってきてしまった今、食への感謝や愛情がないがしろにされてはいないでしょうか。

一食、一食に作ってくれた人の愛情を引き出して、感謝して食べること。私の食道楽の大前提です。