お菓子王国の白YUKI姫

藤田にこ『食ッキング・食っきんぐ』

「人種のるつぼ」がニューヨークなら、ここモントリオールは「人種のモザイク」と呼ばれます。それは、世界各地から集まってきた移民が、一つの「カナダ人」というカテゴリーに同化することなく、各々のルーツとなる国の文化を大事にしたまま生活し、各人種が複雑なモザイク模様のように入り混じっているからです。

YUKIちゃんを紹介してくれたのも、カナダ人のアンドルー。アンドルーが立ち寄ったパンとケーキのお店、その名も「YUKI’S」のパティシエさんです。

YUKIちゃんは、まだ、うら若き可愛らしい女性。でもその細腕を、愛情でマジックハンドに変身させて、世にもおいしいケーキやパンを、日夜作り出しているのです。

サンフランシスコの製菓学校を見事卒業後、そこで出会った愛するご主人様の故郷であるモントリオールにやってきました。二人三脚で、素敵なお店を切り盛り。その見事なコンビネーションぶりは、独身女性なら「ああ、私もあんなパートナーがほしい」と思うだろうし、既婚女性でも「ああ、あんな時代がうちにもあった(ある)」と思うことでしょう。

海外で生活していると、和菓子が恋しくなるでしょう、とよく言われますが、実は「美味しい洋菓子」も同じくらい恋しくなります。大きすぎる、甘すぎる、大味すぎるケーキを売る庶民的なお店や、そうでなければ見た目だけ上品で味や心が感じられない、つんとすましたお店が少なくないなか、サンフランシスコ仕込のお上品さと、日本人ならではの繊細な心配りが詰まったお菓子を提供してくれるYUKI’Sは、我々邦人の強い味方となってくれているのです。
今日、久しぶりにYukiちゃんのお店のケーキを見て、「見ているだけで幸せになる」「笑みがこぼれてくる」ケーキがあることを思い出しました。

チョコレートケーキも、モンブランも、ラズベリータルトも、個性が光るフォルムと絶妙の甘さ。サンフランシスコパンや全粒粉のビオのパンなどは、狙っていかないと売り切れもしばしば。勿論、和テイストの、抹茶ムース、ごまクッキー、ゆずチョコレート、アンパン、クリームパンに、カステラまで、日本人のハートをくすぐる品揃えも見逃せません。

在留邦人にも、そして地元カナダ人にも大人気、メディアに取り上げられることもしばしばの、確立した人気を誇るYUKI’S。人種のモザイク・モントリオールで、食のオリンピックを開催するとしたら、我が国は自信を持ってYUKI’Sに日の丸を振ることができるでしょう。これぞまさしく、「美(うま)し国ニッポン」。北米にすっかり定着した「SUSHIブーム」の次は、「YUKI’Sブーム」の到来やもしれません。

http://www.yukibakery.com/